RESEARCH
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1.ナノメカニクス
MEMS技術を駆使した独自の引張試験システムにより,電界放出型走査電子顕微鏡(SEM)内でナノ材料の強度を直接計測しています.静電アクチュエータおよび静電容量センサを持つMEMSデバイスを設計製作し,SEM内部を独自改造した実験システムにより,ナノワイヤ状の試験片をその場観察しながら引張試験できます.これまでに強度評価した材料には,カーボンナノチューブ,シリコンナノワイヤ,絶縁性ナノ薄膜,超硬ナノロッドなどがあります.シリコンナノワイヤの研究では,機械物性に及ぼすFIB加工ダメージの影響や真空アニール効果を実験的に評価しています.最近では,直径1~3nmの単層カーボンナノチューブのヤング率と引張強度を実測し,ナノチューブの構造と機械物性との相関の実験取得に成功しています.

SEM内ナノ引張試験のためのMEMSデバイス(自作)

SEM内ナノ引張試験システム

単層カーボンナノチューブのピックアップ

単層カーボンナノチューブの応力ひずみ線図

単層カーボンナノチューブバンドルの破壊解析

Siナノワイヤ引張試験片(幅20nm)

SEM内ナノ引張試験システム

単層カーボンナノチューブのピックアップ

単層カーボンナノチューブの応力ひずみ線図

単層カーボンナノチューブバンドルの破壊解析

Siナノワイヤ引張試験片(幅20nm)
2.マイクロメカニクス
薄膜や微小ロッドなどを対象とした様々な独自実験技術を開発しています.例えば,一軸/面内二軸引張試験装置,ポアソン比評価装置,SEM内引張試験装置などの薄膜評価技術や,接合部を持つ微小ロッドの強度測定装置,微小トーションバーの引張・曲げ・ねじり複合試験装置,MEMS構造体の衝撃試験装置などの自作実験装置を有しています.シリコン系膜材料,各種金属膜,高分子膜などの機械物性(ヤング率,ポアソン比,破壊強度,接合強度,クリープ,応力緩和,疲労など)の計測実績があります.最近では,独自の材料試験装置をMEMSや半導体ICへの応力印加装置として用いた研究や,MEMS共振デバイスを使った薄膜の疲労試験なども行っています.マイクロ材料評価のための力学負荷装置を独自に設計開発できるところが生津研究室の強みです.

SEM内薄膜引張試験システム(自作)

MEMS素子の引張曲げねじり複合力学試験

薄膜材料の面内直交二軸引張試験システム

接合部を持つマイクロ試験片の四点曲げ試験

ナノ銀焼成膜の応力ひずみ線図

Al合金薄膜のSEM内疲労試験の様子

MEMS素子の引張曲げねじり複合力学試験

薄膜材料の面内直交二軸引張試験システム

接合部を持つマイクロ試験片の四点曲げ試験

ナノ銀焼成膜の応力ひずみ線図

Al合金薄膜のSEM内疲労試験の様子
3.発熱多層膜の接合応用
独自開発した多源DC/RFスパッタリング装置を使い,種類の異なる金属をナノの厚みで積層堆積させた多層膜を作製しています.軽金属と遷移金属の組み合わせ(例えばアルミニウムとニッケル)で作製した多層膜に外部から微小刺激を与えると,合金化に伴う発熱反応が生じます.この発熱材料は瞬間的かつ局所的に昇温できるため,はんだ接合の熱源など,様々な応用が期待できます.最近では,ピンセットで突くだけで反応するような外部刺激に超敏感な発熱多層膜や生体適合材料でできた発熱素材などを開発し,半導体デバイスや医療分野への応用を目指しています.

アルミ/ニッケル多層膜の自己伝播発熱反応の様子

アルミ/ニッケル発熱多層膜の断面構造(バイレイヤー300nm)

シリコンウェハの瞬間接合の様子

瞬間接合体の断面の様子

0.1秒瞬間接合した2枚のシリコンチップ

アルミ/ニッケル瞬間加熱したナノ銀焼結体の熱衝撃試験

アルミ/ニッケル発熱多層膜の断面構造(バイレイヤー300nm)

シリコンウェハの瞬間接合の様子

瞬間接合体の断面の様子

0.1秒瞬間接合した2枚のシリコンチップ

アルミ/ニッケル瞬間加熱したナノ銀焼結体の熱衝撃試験
4.ナノ粒子の機能開拓
材料をナノ粒子化することで新たに発現する機能やナノ粒子を配列させて生じる物理現象などを使い,自由な発想で学術的にも見た目にも面白いメカニクス研究を行っています.例えば,ナノ粒子一粒の中に生体適合材料の組み合わせ(例えばチタンと酸化シリコン)から成る繰り返し構造を作り,発熱機能を持たせたナノ粒子の開発や,自作のシリカナノ粒子を面心立方構造に配列させて構造色を発現させ,色でひずみ分布を表現する新たなセンサ材料の開発,シリコン酸化膜の中に単結晶シリコンナノドットを作り,既存概念と異なるアイディアで機械物性や電気物性を変調させる研究開発などを行っています.

多孔質シリカナノ粒子(自作)

チタン/シリカナノ粒子の発熱反応の様子(直径100nm程度)

アルミ/ニッケルマイクロ粒子発熱反応の様子(直径500µm程度)

電子線照射で作製した単結晶シリコンナノドット(直径10nm程度)

シリカナノ粒子配列による構造色フィルム

シリカナノ粒子配力による構造色の角度依存性

チタン/シリカナノ粒子の発熱反応の様子(直径100nm程度)

アルミ/ニッケルマイクロ粒子発熱反応の様子(直径500µm程度)

電子線照射で作製した単結晶シリコンナノドット(直径10nm程度)

シリカナノ粒子配列による構造色フィルム

シリカナノ粒子配力による構造色の角度依存性
5.MEMS/NEMS デバイス
マイクロ/ナノ電気機械システム(MEMS/NEMS)は,マイクロメートル/ナノメートルスケールの「機械」であり,自動車,航空,センシング,電子機器,通信,医療,AI 産業など,さまざまな分野で応用されています.私たちは特に,MEMS/NEMSの共振器デバイスに注目しています.これらは,集積されたマイクロ/ナノ構造の高周波機械振動を活用し,超高感度センシング,効率的な情報処理,高周波信号処理などの新たな応用が期待されているものです.右の写真は,わずか幅20 nmの超薄型シリコンNEMS共振器デバイスを示しており,共振周波数,非線形性,品質係数(Q値)などを超広範囲にわたって静電的に調整することが可能です.私たちは,これらのデバイスが持つユニークな動的特性を研究し,超高感度センシングやリザバーコンピューティングといった新たな応用に活かす方法を探っています.
当研究グループは,シリコン,ダイヤモンド,グラフェンなどの材料を用いたMEMS/NEMSデバイスの設計,シミュレーション,理論モデリング,微細加工,および評価に関する専門知識を有しています.

超薄膜・高可変なシリコンNEMS共振器

セラミックパッケージ上のSi NEMS共振器

Siナノ共振器から得られた共鳴ピーク

共振周波数の超広帯域チューニング

NEMS共振器の非線形応答

3次非線形性のキャンセルレーション

セラミックパッケージ上のSi NEMS共振器

Siナノ共振器から得られた共鳴ピーク

共振周波数の超広帯域チューニング

NEMS共振器の非線形応答

3次非線形性のキャンセルレーション
6.ダイヤモンド デバイス
ダイヤモンドは宝石として,永遠の愛と誰もが羨む富の象徴として広く知られています.また,科学技術の観点からも,常に魅力的な素材です.ダイヤモンドは,他のどの素材とも比類のない優れた物理的・化学的特性を兼ね備えています.さらに,ダイヤモンドの優れた化学的安定性と生体適合性は,特に過酷な環境や医療分野における新たな用途を可能にします.さらに,ナノスケールのダイヤモンドは極めて大きな弾性ひずみ(約10%)に耐えることができるため,新しいタイプの「ひずみ工学」電子デバイスの実現を可能にします.このように,ダイヤモンドをマイクロ/ナノスケールデバイスの材料として使用することで,性能と信頼性を向上させ,その応用範囲を拡大することができます.しかしながら,ダイヤモンドは微細加工が非常に難しいことで知られています.私たちは,人工ダイヤモンドを用いた電子・電気機械デバイスを作製するために,マイクロ/ナノメートルスケールのパターニングと反応性イオンエッチングのためのスケーラブルな手法を研究しています.これらの取り組みが,将来,ダイヤモンドデバイスのスケーラブルな製造とユビキタスな応用につながることを期待しています.

Crマスクを用いた酸素プラズマ中のCVDダイヤモンドの反応性イオンエッチング

RIE処理下のCVDダイヤモンド

ダイヤモンドMEMSカンチレバーデバイス

ダイヤモンドMEMS共振器デバイス

ダイヤモンドサーマルアクチュエーター

ダイヤモンドナノニードル変形挙動

RIE処理下のCVDダイヤモンド

ダイヤモンドMEMSカンチレバーデバイス

ダイヤモンドMEMS共振器デバイス

ダイヤモンドサーマルアクチュエーター

ダイヤモンドナノニードル変形挙動